おりもの
1.おりものとは
おりものとは、膣や子宮から剥がれた古い細胞などが混ざった分泌物です。皮膚から垢が出るのと同じように、老廃物のようなものですので誰にでもあるものです。女性からすると、「何か病気なのではないか」「下着が汚れて困る」などのネガティブなイメージをお持ちの方が多いおりものですが、実はおりものは雑菌などが膣内に入るのを防ぐことで膣内を綺麗に保ってくれています。
それだけではなく、排卵時には精子を受け入れやすくすることで妊娠を助けてくれる役割も持っています。ですが、そんなおりものに異常が現れた場合は何かの病気のサインかもしれません。
おりものと女性ホルモンの関係
女性の体は生理周期という約一ヶ月の一定のサイクルの間に女性ホルモンである
「エストロゲン(卵胞ホルモン)」
「プロゲステロン(黄体ホルモン)」
の量が変化することで、排卵や月経などが起こっています。
おりものの量はこれらの女性ホルモンの影響を受けて変化します。特に排卵期に向けては、精子を受け入れやすくし 妊娠しやすくするためにおりものの量が増え、粘り気が強くなります。排卵日が終わるとおりものの量が減り、月経前には匂いが強くなる場合もあります。自身の生理周期とおりものの関係を把握しておくと、体調や体の変化に気付きやすくなります。
おりものの状態
おりものは匂い、色、形状などが生理周期や体調などによって様々に変化します。
- 卵胞期前半・・・生理の直後は残った経血と混じり合って茶色っぽい色になります。量は一番少なくさらっとしたおりものです。
- 卵胞期後期・・・排卵期に向けておりものの量が増えていきます。
- 排卵期・・・最も量が多い時期です。卵の白身のようなとろみのある透明な状態で、匂いはそれほど強くありません。受精の手助けをする役割があります。
- 黄体期・・・量は次第に減少し、粘性のあるドロっとした白濁の状態に変わります。
- 生理前・・・生理前になると量は再び増えます。匂いの強い粘性のあるドロッとした白濁の状態です。生理前は若干血の混じる場合もあります。
このように生理周期に合わせておりものが変化しますが、以下のような異常や変化があった場合には一度受診をおすすめします。
- 普通よりおりものが濃い
- パンティライナーで足りないほど量が多い
- カッテージチーズのような、白い塊になっている
- 灰色、緑色、黄色っぽい、茶褐色など血液の混じった色をしている
- 痒みや発疹、灼熱感、痛みなどを伴う
- 魚の腐ったような生臭い匂いがする
2.原因と症状
不正出血が原因の異常
おりものの色がピンクだったり茶褐色の場合は血液が混ざっています。この場合は不正出血の可能性が高く、 子宮や卵巣に異常がある、もしくはホルモン異常による生理不順の可能性があります。
体調の変化による異常
体調やホルモンの変化により膣内にいる常在菌のバランスが崩れ、おりものに異常が起こることがあります。 基本的には自然治癒しますが、長続きする場合や状態が悪い場合は医師の診断を受けましょう。
クラミジア感染症
クラミジア・トラコマティスという微生物が原因で起こる、女性がかかる最も多い性感染症です。 おりものは量が増える、匂いが臭くなる、黄色くなるなどの症状が起こります。その他には腹痛・排尿痛や発熱などの 症状が出ます。無症状の場合もあります。
膣カンジダ症
カンジダという真菌の一種が原因で起こる真菌感染症です。この菌は誰にでも膣内にいる可能性のある常在菌ですが、 体調不良などにより体の抵抗力が落ちると増え、白いクリーム状のもの、もしくはカッテージチーズのような白く濃い固形状のおりものが出たり、量が増えるなどの症状が出ます。 その他には外陰部に強い痒みや灼熱感、性交時の疼痛が生じます。
淋菌感染症
淋菌という細菌が原因で起こる近年増えている性感染症です。基本的に性的接触により感染します。 おりものは量が増える、匂いが臭くなる、黄緑のような膿っぽい色になる、下腹部痛や発熱などの症状が出ます。無症状の場合もあります。
トリコモナス膣炎
膣トリコモナスという原虫が原因で起こる膣感染症です。基本的に性的接触により感染します。おりものは量が増える、 強い悪臭、黄色もしくは黄緑色になり、細かい泡が混じるなどの症状が出ます。その他には外陰部の痒みや痛みなどの刺激があります。 膣トリコモナスは、感染してすぐに症状が起こる場合と数週間から数ヶ月の間症状が出ない場合もあります。
子宮頸がん
子宮の入り口である「子宮頸部」にできるがんです。おりものは量が増える、匂いが臭くなる、黄色や緑色になるなどの症状が起こります。進行すれば命に関わりますが、定期的に検診を受けていればがんになる前の段階で診断ができます。
子宮頸管炎
子宮頸管の粘膜の炎症により起こります。この炎症は膣の常在菌が原因となっている場合や、性的接触で感染する細菌などが原因になっている場合もあります。おりものは量が多く、外陰部などに痒みがでて、黄色や緑色や茶色になるなどの症状が出ます。
細菌性膣炎
膣内の環境が乱れ自浄作用がなくなることによって、様々な細菌が繁殖することが原因で起こります。過度な性交渉や過剰な膣洗浄、体力の低下などが原因です。おりものは量が増え、魚が腐ったような匂い、外陰部の痒みや刺激感などの症状が出ます。
子宮腟部びらん
子宮の入り口部分が赤くただれることにより起こります。これは女性ホルモンが活発になると起こるもので病気ではありません。自覚症状はほとんどなく、通常のおりものに血が混ざってピンクになったり茶褐色になる場合があります。
子宮頸管ポリープ
子宮頸管の辺りにできるポリープが、雑菌感染による炎症や女性ホルモンなどによる物理的な刺激を受けることによって出血し、おりものに血が混じる場合があります。ごくまれに前がん病変、悪性腫瘍の場合もあるので切除して検査する場合もあります。 ポリープの組織は柔らかいため、運動や性交などの刺激で出血することがあり、おりものに血が混じったり感染を起こしている場合は膿が混じる場合があります。
3.検査
おりもの検査・・・綿棒のようなもので膣内と頚管内のおりものを採取して培養し、顕微鏡で菌糸を確認します。痛みはほぼないですが内診になりますので、抵抗がある方には強制して行うものではありません。
4.治療
異常の原因が性感染症だった場合、基本的には自然治癒することはないのですぐに受診が必要となります。 たとえ症状は消えても病原菌は体に潜んでいるので、病気は進行していきます。治療方法は薬物療法がほとんどで内服薬、塗り薬、膣内に薬剤を入れる膣薬など様々な投薬方法がありますが、必ず医師の指示に従って正しく使用する必要があります。
自己判断で薬を使用しない
性感染症というと、「病院へ行くのが恥ずかしい」「家族やパートナーにばれたくない」「人に相談しにくい」という理由で自分で治そうとしたり、自然治癒を試みる人がいます。ですが既に説明した通り、基本的に性感染症は自然治癒しませんし放っておけばおくほど病気は進行します。
また自己判断で余った抗生剤を服用するといったことは、大変危険な行為ですので絶対にやめましょう。別の病気の原因になったり、病気によっては悪化したり、病気やウイルスに抗体がつく可能性もあります。
確かに性感染症は薬で治る病気がほとんどですが、それは医師からの診断を受けて処方された薬を正しく飲むことが前提になります。他の病気と比べると、確かに通院に勇気がいるかもしれません。ですが、大切なパートナーのため、何より自分の体のために不安や異常を感じたらできるだけ早く婦人科へかかりましょう。
5.普段から自分のおりものチェックを
おりものは女性の体の状態に合わせて変化を見せます。普段からチェックして自分のおりものパターンを理解しておくと、自分の体の変化に気づけるようになります。少しでも気になることや疑問があったら婦人科を受診しておくと、もしもの時にも相談しやすくなります。
その際に普段の自分の状態を把握していることでより正確な診断が行えます。普段は女性の体を守ってくれているおりものと上手に付き合っていくことも、素敵な女性としての第一歩です。
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